第六章 香港で出会った変人
変人との出会い
「今日はすごく変なヤツに出会った。まだ23歳なのに、世界中のあちこちを旅してきたような男で、経験が豊富である。それに、膨大な量の本を読んだと思われ、知識も豊富だ。それだけでは別にオドロキはしないが、そいつはよくいるような知識をひけらかすだけのヤツではなく現実というものをしっかりと見つめていて、くやしいけど納得せざるを得ないような意見を持っている。素直にコイツはスゴイと思った。(後略)」
<8月10日の日記より抜粋>
彼と初めて出会ったのは
香港のドミトリーであった。
香港に着いて最初の二日間、
私は熱を出してうなされていた。
そして風邪が治ったその日に
彼がドミトリーに入ってきた。
最初に彼と会話した時の印象は
「嫌な奴」
であった。
やたらとなれなれしくて、
態度がでかくて、
自信過剰で、
コイツとは
絶対友達にはなれない
と思った。
まさか日本に帰って来てから、
しょっちゅうメールを交換し、
一緒に飲みに行き、
私の家に遊びに来るような
仲になるとは
夢にも思わなかった。
始めのうち私は
彼を避けようとしていた。
宿に戻る時、
「彼がいませんように」
と祈りながら
入り口のドアを開けていた。
しかし私が彼を
避けようとすればするほど、
彼と過ごす時間は増えていった。
四人部屋のドミトリーで
彼と二人きりで話すことが
多くなった。
壁が消えた時
ある日、
二人で話をしている時に彼が、
自分はノイローゼ気味だったことが
あるという話をした。
旅をしていると
他に何もすることがないから、
自分はなんでこの世にいるんだろうとか、
なんでこんなところを旅しているんだろう、
生きるってなんだろう、
ということを考えるのだという。
日本に帰ってきても
そんなことを考えていると、
出口がなくなり、
ノイローゼになってしまうのだ。
彼は笑ってそう言った。
「実は俺もそういうことで
悩んだことがあるんだ。
だから留年してるんだけどね」
私も初めての中国から帰って来た後、
生きるということに対して1年間、
真剣に悩んだことがある。
その話をした時に、
私が彼との間に築いていた壁が
取り払われた気がした。
その後彼とは、
映画の話、本の話、旅の話、恋愛の話、
その他かなり深いところまで
話し合った。
だんだん彼と話すのが
楽しくなってきた。
香港にいる間、
しょっちゅう彼と一緒に
夕食を食べに行っていた。
彼の名はNくん。
世界のほとんどの国に
行ったことがあるのではないかと
思うほど旅をしている。
普通、旅で出会った人には、
「他にどんな国に行ったことがあるの?」
などと質問するものだが、彼に対しては、
「今までまだ行ったことのない国はどこ?」
と質問したくらいだ。
「アフリカなんて50以上も国があるんだよ。
まだたくさんあるよ」
吉野家で席を並べて牛丼を食べながら、
彼は笑ってそう答えた。
そして、旅なんて
現実逃避にしかすぎないんだと
話してくれた。
香港で彼と過ごしたことによって、
その後の旅の間中、
自分がなぜ旅に出たのか、
旅に出て何を学んだのかを
考えることとなった。
香港と中国
その香港には
10日間も滞在してしまった。
ベトナムのビザと、
再び中国に入るための
中国ビザの発行に
1週間かかったからだ。
ベトナムビザの発行に、
ある程度の時間がかかるのは
覚悟していた。
しかし予想外だったのは、
深圳から香港に入る時、
「出国」
というスタンプを押されたことだ。
これでは
もう一度中国に入るためには、
また中国ビザを
取り直さなければならない。
香港は中国に返還された、
だから中国国内を移動するように、
香港へも行けるはずである。
私はそう思っていた。
しかし香港はまだ中国ではなかった。
深圳と香港との間には
確実に国境が存在した。
「イギリスの香港」から
「中国の香港」になったものの、
香港は香港であった。
一年前と
何も変わっていなかった街、
香港。
そしてそこで出会ったNくん。
この10日間で学んだことは
非常に大きい。
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